▼クレームと初孫2017/08/09 08:00 (C) 医療法人社団聰明会 みゆき整形外科クリニック
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神経障害性疼痛治療薬を処方した患者さん、「お前にもらった薬を飲んだらわき腹の皮膚にぶつぶつができた。」私「(ん、もしや薬診か?)どれどれ、あー、これはつづらご(この地方では帯状疱疹の事をこう呼びます)ですよ。体の抵抗力が弱くなると出やすいウィルス性疾患ですよ。薬出しておきますね。」
変形性膝関節症の患者さん、「お前にされた注射のせいで余計に膝が痛くなった。」私「あなたにしたのは麻酔薬の入った注射ですよ。麻酔の注射で余計に痛くなるはずはないんですが。」よくよく聞くと注射して具合がいいので畑仕事をしたら前より余計に痛くなったとのこと。それは注射のせいではなく畑仕事をしたせいでしょうが。
骨粗鬆症の薬を処方している患者さん、「最近前歯がぐらぐらしてきたのはお前の出した骨粗鬆症の薬のせいだ。」私「どれどれ、これは年を取って歯茎が萎縮して歯がぐらぐらしてきたのですよ。年を取るとだんだん歯がぐらぐらして亡くなっていくもんですよ。だから年寄りで入れ歯の人が多くなるのですよ。」
患者「いいや、この薬の説明書にあごの骨が悪くなると書いてある。きっとこのせいだ。」私「それは、この薬を飲むと10万人に1人の割で下顎骨の骨髄炎になる人がいます。交通事故で死ぬ確率よりも低いんですよ。それにそうなった人のほとんどは口の中を不潔にしていた人ばかりなのですよ。」患者「いいや、この薬のせいだ。」私「ではほかの医者に言って相談してみてください。歯医者さんにも言って治療してもらってください。」等々。
最近圧倒的に多いのは薬のせいで悪くなったというものです。それに対する説明で納得してもらうのに時間がかかるし、そうなると他の患者さんが「いつまで待たせるんだ。」とあからさまに顔に表して診察室に入ってくるので、気の弱い私としてはつらいものがあります。
介護の方でも様々なクレームがあります。「何かあったらすぐに病院に連れて行け。」病院の方では「この方はもう看取りの方ではないのですか。そう何回もつれてきてもらってもこちらも困ります。」私「申し訳ありません。家族の方がどうしても病院というものですから。病院の先生の方から家族に引導を渡していただけないでしょうか。」と頭を下げてお願いしています。
こういう人の中には、老人の年金に頼って生活している家族がかなりな数混じっています。遺族年金なんて月に何十万になるのではないですか?公務員だった私の父親の年金もすごかった。月に20万円以上はもらっていたと思います。私の年金は月7万と年金お知らせ便に書いてありました。雲泥の差といっていいでしょう。そういう高額の年金をもらっているお年寄りに安易に死んでもらっては生活が苦しくなる家族がたくさんいるのです。だから、親が死んでも葬式も出さないで役所に届けずにミイラ化して部屋から発見されるなんて例が最近後を絶たないのです。つくづく情けない世の中になりました。
その他にもあきれるクレームが山ほどありますが、それは次回にでもお話ししましょう。嫌な暗い話ばかりしていると心が腐る。
先月、初孫が生まれました。嫁いだ娘が産後しばらくは我が家にいてばあさん(私の妻)がいっしょにめんどうをみています。かわいいものです。今までは赤ん坊が泣くと「うるさいな。」とだけ思っていました。だから小児科の先生なんてよくやるよと思っていました。しかし、自分の孫と思うからか泣くのもかわいいものです。それとも「じじい」になった心境の変化でしょうか。
数か月前に患者さんとの話の中で、自分の子供でもなくてもかわいい、泣いたら余計にかわいいという人がいました。そういう人も世の中にいるんだなと感心しましたが、自分の初孫を見ているとそういう気持ちもわからないでないようになりました。
世の中そんな気持ちの人が多ければ、クレームばかりの殺伐とした国も再びいい方向に変わっていくことでしょう。わが初孫が大人になる時には、自分勝手な意見を強引に通そうとする殺伐な社会から日本が脱却していることを願うばかりです。
病気になった人間を絶対に死なせないで助けることができるというほど医学は進歩していませんが、今年5月に亡くなった母にひ孫を見せてあげたかったと思う今日この頃です。